さんまの塩焼き、きのこたっぷりの炊き込みご飯、ほくほくのさつまいも…。実りの秋は、美味しいものがたくさんで、ついつい食べ過ぎてしまう季節ですね。
しかし、美味しい食事を楽しんだ後、「急に強い眠気に襲われる」「さっき食べたばかりなのにもうお腹が空く」といった経験はありませんか? もし心当たりがあれば、それは体が発する危険信号、「血糖値スパイク」かもしれません。
この記事では、あなたの血管を静かに傷つける血糖値スパイクの正体と、今日からすぐに始められる賢い食べ方のコツについて解説します。
あなたは大丈夫?「血糖値スパイク」に特に注意してほしい方
血糖値スパイクは、健康診断の空腹時血糖値が正常な方でも起こりうるため、自分では気づきにくいのが特徴です。特に、以下に当てはまる方は注意が必要です。
- ご家族に糖尿病の方がいる
- 若い頃と比べて体重が10kg以上増えた
- 健康診断でメタボリックシンドルーム(メタボ)を指摘された
一つでも当てはまる方は、ぜひこの記事を「自分ごと」として読み進めてみてください。
血管を傷つける「血糖値スパイク」の正体とは?
血糖値スパイクとは、食事によって糖質を摂取した後に、血糖値が急上昇し、その後、急降下する状態のことです。まるでジェットコースターのように血糖値が乱高下することで、私たちの血管は大きなダメージを受けてしまいます。
このダメージが繰り返されると、血管が硬くなる動脈硬化が進行し、将来的には心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めることが知られています。
見過ごしがちなサイン:「食後なのに空腹」のワケ
「食後なのにお腹がすく」という不思議な感覚も、血糖値スパイクのサインの一つです。
血糖値が急上昇すると、すい臓が「大変だ!」と驚いて、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を大量に分泌します。すると、今度は血糖値が急降下しすぎてしまい、体が「糖が足りない」と勘違いして空腹感を覚えてしまうのです。
この状態を放置すると、2型糖尿病の発症リスクが高まるほか、アルツハイマー型認知症や一部のがんの発症にも関与しているという報告もあります。
今日から実践!秋の味覚を楽しみながらできる2つの新習慣
「なんだか怖くなってきた…」と感じた方も、ご安心ください。血糖値スパイクは、日々の少しの工夫で予防・改善が期待できます。難しいカロリー計算の前に、まずは「食べる順番」を変えてみませんか?
習慣①:『ベジタブルファースト』で守る
食事の最初に、野菜やきのこ、海藻など食物繊維が豊富なものから食べ始めましょう。食物繊維は、後から入ってくる糖の吸収を穏やかにしてくれる、いわば「ガードマン」のような働きをしてくれます。
習慣②:『カーボラスト』で攻める
ベジタブルファーストの次に意識したいのが「カーボラスト」。つまり、ご飯、パン、麺類といった炭水化物(糖質)を食事の最後に食べるという考え方です。秋に美味しい栗ご飯やさつまいもも、できれば食事の後半に楽しむのがおすすめです。
【おすすめの食べる順番】
① 野菜・きのこ・海藻類(食物繊維)
↓
② 肉・魚・大豆製品(タンパク質)
↓
③ ご飯・パン・麺類(炭水化物)
この黄金ルールを意識するだけで、食後の血糖値の上昇は大きく変わります。
安芸郡府中町の皆様へ。今年の秋から始める小さな一歩
今年の夏は記録的な猛暑で、屋外での活動を控え、運動不足になってしまった方も多いのではないでしょうか。 過ごしやすい気候になってきた今こそ、健康づくりのチャンスです。「軽いウォーキングを始めてみる」「毎日の食事を一口、二口減らしてみる」など、無理のない範囲で、できることから始めてみましょう。小さな一歩が、未来の大きな健康へと繋がります。
まとめ:食べる順番を変えて、未来の健康を守りましょう
食欲の秋、美味しいものを我慢する必要はありません。大切なのは「食べる順番を少しだけ工夫すること」です。
「ベジタブルファースト、カーボラスト」を合言葉に、賢く食べて、ご自身の体を大切にしていきましょう。
当院での診療について
血糖値や生活習慣病など、お体のことで何かご不安な点がございましたら、一人で抱え込まず、お気軽に当院へご相談ください。当院では、総合内科専門医が、幅広い視点から皆様の健康を親身にサポートします。
【参考文献】
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.
なんば内科クリニック 難波将史