安芸郡府中町の皆様、こんにちは。なんば内科クリニックです。
2025年の夏、皆様いかがお過ごしでしょうか。「夏風邪をひいて、熱や鼻水は治まったのに、咳だけがずっと続いている…」そんな症状に悩まれてはいませんか?
もしその咳が2週間以上続いているなら、単なる夏風邪ではなく、今、大人にも流行している感染症「百日咳」かもしれません。
大人の「百日咳」、ここが風邪と違う
「百日咳」と聞くと、多くの方が子どもの病気というイメージをお持ちだと思います。しかし、近年は大人、特に子どもの頃のワクチン効果が薄れてきた20代以上の方にも感染が広がっています。
● 見分けにくい初期症状
はじめの1〜2週間は、軽い咳や鼻水、微熱といった、ごく普通の風邪とほとんど区別がつきません。
● 決定的な違い
風邪との大きな違いは、その後の咳のしつこさです。だんだんと咳がひどくなり、一度出始めると激しく咳き込む発作のようになります。夜中に咳の発作で目が覚めてしまったり、咳き込みすぎて吐きそうになったりすることも。風邪薬を飲んでも一向に良くならず、2週間以上咳だけがしつこく残る。これが百日咳を疑う大きなサインです。
「なぜ検査しないの?」百日咳診断の現実と専門医の視点
咳が長く続けば、「検査で原因をはっきりさせてほしい」と思われるのが当然です。しかし、百日咳の確定診断に用いられる血液検査などは、結果が出るまでに1週間以上かかることも少なくありません。
検査結果を待っている間に、ご自身のつらい症状が続くだけでなく、気づかないうちにご家族、特に免疫のない赤ちゃんにうつしてしまうリスクがあります。そのため当院では、患者様との対話、つまり「丁寧な問診」を何より重視し、臨床症状から早期に診断を下して治療を開始することを優先しています。
「ご家族に同じような症状の方はいませんか?」「普段の風邪の咳と、何か違う感じはありますか?」といった会話の中に、診断の重要な手がかりが隠されているのです。
百日咳の治療に関する「本当の話」
百日咳の治療には、百日咳菌を退治するための抗菌薬(抗生物質)を用います。これは、周囲の人へ感染させてしまう期間を短くするために、非常に重要なお薬です。
ただし、ここで一つ知っておいていただきたいことがあります。このお薬は、残念ながら咳止めの特効薬ではありません。飲み始めても、気道の炎症が治まるまで、しばらくは咳が続くことが多いのです。
しかし、発症してからなるべく早く服用を始めれば、症状の悪化を防ぎ、つらい咳の期間を短くする効果が期待できます。「おかしいな」と思ったら早めに受診することが、結果的にご自身の体を楽にすることにつながります。
あなたが感染源にならないために。今、家庭でできること
大人がかかる百日咳は、つらいですがいずれ治ります。しかし、本当に怖いのは、ワクチンをまだ接種していない赤ちゃんにうつしてしまうことです。赤ちゃんが百日咳にかかると、重い肺炎になったり、呼吸が止まってしまったりと、命に関わることもあります。
大切なご家族を守るためにできること。それは特別なことではありません。基本に立ち返り、「マスクの着用・こまめな手洗い・うがい」を徹底すること。これに尽きます。
大人のワクチン接種について知っておきたいこと
赤ちゃんの誕生を控えている妊婦さんや、お父さん、祖父母の皆様がワクチンを接種することは、赤ちゃんを感染から守る「コクーン(繭 まゆ)」のような役割を果たし、非常に有効です(コクーン戦略と呼ばれます)。
ただし、2025年夏現在、全国的な需要の急増により、大人が接種できる百日咳含有ワクチンが不足し、流通が不安定な状況です。接種をご希望の際は、まずはお電話などでお問い合わせください。
まとめ:長引く咳は「呼吸器の専門家」にご相談ください
咳の原因は百日咳だけではありません。咳喘息など、他の病気が隠れている可能性もあります。2週間以上続くつらい咳を「風邪の治りかけ」と自己判断せず、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
当院では、呼吸器専門医、総合内科専門医の資格を持つ医師が、専門的な視点で皆様の健康をサポートします。つらい咳の症状、ぜひお気軽にご相談ください。
なんば内科クリニック 難波将史