1. はじめに:その症状、いつもの夏バテと決めつけていませんか?
「ここ最近、どうも食欲がない。そうめんのような、さっぱりしたものしか食べられない…」
「日中の屋外作業でぐったりして、熱中症かと思って休んだけれど、次の日になってもだるさが抜けない…」
夏の厳しい暑さが続くと、多くの方がこのような身体の不調を感じるのではないでしょうか。毎年経験するからと、「いつもの夏バテだろう」とご自身で判断し、やり過ごしている方も少なくないかもしれません。
しかし、その「だるさ」、本当にただの夏バテでしょうか。その裏には、治療が必要な病気が隠れている可能性もあるのです。
2. 「夏バテ」と決めつける前に。セルフチェックしておきたいこと
私たちが診察の際、まず患者さんにお話を伺うことがあります。ご自身の状況を振り返る参考にしてみてください。
- 屋外での活動や、逆に冷房が効きすぎた室内で過ごす時間は長かったですか?
- これまでの人生で、夏になると同じような症状を繰り返した経験はありますか?
夏バテは、高温多湿な環境と室内の冷房による急激な温度差などから自律神経が乱れ、胃腸の働きが落ちたり、全身の倦怠感につながったりする状態です。上記のような状況に心当たりがあれば、いわゆる「夏バテ」の可能性はあります。しかし、症状が長引く場合は注意が必要です。
3. もしかして?夏のだるさに隠れた病気のサイン
夏のだるさや食欲不振といった症状は、他の病気でも現れることがあります。特に見過ごされやすい病気のサインをいくつかご紹介します。
- 貧血のサイン:
貧血になると、身体のすみずみまで酸素を運ぶヘモグロビンが不足するため、疲れやすさや息切れといった症状が出ます。そして、特徴的なサインの一つに「無性に氷が食べたくなる(氷食症)」ことがあります。冷たいものが欲しくなる夏場ですが、飲み物ではなく、ガリガリと氷そのものを大量に食べてしまう場合は貧血が隠れているかもしれません。 - 甲状腺の病気のサイン:
のどぼとけの下にある甲状腺の働きに異常が出ると、全身に様々な症状が現れます。だるさに加えて、「首の腫れ」や「原因不明のむくみ」「安静にしていても心臓がドキドキする(動悸)」といった症状があれば、甲状腺の病気が疑われます。 - その他注意したいこと:
ご自身では気づきにくい「脱水」状態や、普段服用しているお薬の副作用、そして頻度は稀ですが、がんなどの重い病気が原因でだるさが生じている可能性もゼロではありません。
4. クリニックでは何をするの?受診の流れと検査
「病院に行くほどではないかも…」「どんな検査をされるんだろう?」と、受診をためらう方もいらっしゃるかもしれません。
当院では、まず患者さんのお話をじっくりと伺い、まぶたの裏側(眼瞼結膜)の色を確認したり、首の腫れがないか触診したり、胸の音を聴いたりといった身体の診察を行います。
その上で、原因を特定するために「血液検査」を行うことが非常に重要です。簡単な採血だけで、貧血の有無や、甲状腺ホルモンの値、脱水の状態など、だるさの原因となっている多くの情報を得ることができます。
5. 医師が教える、本当の「夏バテ」対策
診察や検査の結果、特に病気が見つからなかった場合は、いわゆる「夏バテ」と診断されます。その場合、私たちが最も重視しているのは「水分補給」です。夏バテの原因の多くは、自覚がないまま脱水状態に陥っていることが関係しています。
ただし、水分なら何でも良いわけではありません。スポーツドリンクは汗を大量にかいた時には有効ですが、糖分も多く含まれています。あまり汗をかいていないのに飲みすぎると、かえって血糖値が上がり、だるさの原因になることも。普段の水分補給は、水やお茶を中心にするのがおすすめです。
6. まとめ:気になる症状は「年のせい」「夏のせい」にせず、専門家へご相談を
この記事を通してお伝えしたいメッセージは一つです。「夏バテだろう」と自己判断して我慢しないでほしい、ということです。その症状は、身体が発している重要なサインかもしれません。
特にご高齢の方は、ご自身でも気づかないうちに脱水が進んでいたり、他の病気が隠れていたりするケースも少なくありません。「なんだかいつもと違うな」と感じたら、症状が軽くても、ぜひ一度お気軽に当院へご相談ください。
7. 地域の皆様の健康を多角的にサポートします
一つの症状でも、その背景には様々な原因が考えられます。当院では、総合内科専門医として、多角的な視点で皆様の健康をサポートします。どんな些細なことでも、安心してご相談いただけるクリニックでありたいと考えています。
なんば内科クリニック
難波将史