【熱中症対策】血圧の薬や痛み止めを飲んでいる方へ。医師が教える、お薬と上手に付き合う夏の過ごし方

こんにちは。なんば内科クリニック 院長難波将史です。

梅雨が明け、いよいよ夏本番。日中の日差しも強くなり、熱中症対策を意識されている方も多いのではないでしょうか。こまめな水分補給や涼しい場所での休憩は基本ですが、実は、いつも飲んでいるお薬が熱中症のリスクに影響することがあるのはご存知でしたか?

今回は、お薬を服用中の方が特に気をつけたい熱中症対策について、医師の視点から解説します。

なぜ?お薬が熱中症に影響する主な理由

「お薬が熱中症に関係する」と聞くと、少し不安に思われるかもしれません。これは、一部のお薬が体内の水分バランスを変化させたり、体温調節機能に影響を与えたりすることがあるためです。

例えば、おしっこの量を増やして体の水分を外に出す作用のあるお薬や、体の熱を逃がすための「汗をかく」という働きに影響を与えるお薬などがそれに当たります。

【セルフチェック】特に注意したいお薬の例

ご自身やご家族が飲んでいるお薬に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。

  • 血圧のお薬(降圧薬・利尿薬)
  • 一部の糖尿病のお薬(SGLT2阻害薬など)
  • 痛み止め(ロキソニン®など)を日常的に飲んでいる方

これらのお薬は、それぞれの病気の治療に欠かせない大切なものです。決して「悪い薬」というわけではありませんので、ご安心ください。ただ、「夏の間は、お薬との付き合い方に少し工夫が必要」と覚えておいていただければと思います。

これってサインかも?服薬中の方が見逃したくない熱中症の危険な兆候

お薬を飲んでいる方は、次のような体の変化に特に注意してください。

  • なんだか吐き気がする、気分が悪い
  • 気温は高いのに、なぜか汗があまり出ない
  • 食事も摂れず、ぐったりしている

特にご高齢の方は、ご自身で体調の変化を訴えるのが難しい場合もあります。周りのご家族が「いつもより口数が少ない」「なんだか元気がないな」と感じたら、熱中症を疑い、声をかけるようにしてください。

やっていませんか?熱中症対策の「よくある誤解」

良かれと思ってやっている対策が、実は効果が薄い、あるいは逆効果なこともあります。

  • 誤解①:「のどが渇いていないから大丈夫」
    →これは危険な思い込みです。特にご高齢の方は、体は水分を欲していても「のどの渇き」を感じにくくなっています。「渇いていなくても、時間を決めて飲む」を夏の習慣にしましょう。
  • 誤解②:「水やお茶だけをたくさん飲めばOK」
    →汗と一緒に、私たちの体からは水分だけでなく「塩分」も失われています。水分だけの補給を続けると、体内の塩分濃度が薄まってしまい、かえって体調不良を招くことも。麦茶や水に加えて、経口補水液やスポーツドリンク、塩分補給用のタブレットなどを上手に活用しましょう。

なんば内科クリニックからの提言:今日からできる2つの約束

この夏を元気に過ごすために、ぜひ2つのことをお約束ください。

  • 約束①:まずは「いつもよりコップ1杯多く」水分を摂りましょう。
    心臓や腎臓の病気で医師から水分制限の指示を受けている方以外は、夏場に水分を少し多く摂って困ることはほとんどありません。まずは意識的に、いつもよりコップ1杯分、多く飲むことから始めてみてください。
  • 約束②:自己判断でお薬をやめないでください。
    「暑いから、今日の薬はやめておこう」という自己判断は、血圧の急上昇などを招く可能性があり、大変危険です。お薬の調整が必要かどうかは、私たちが専門的な視点で判断します。ご自身の判断で中断せず、不安な時はまずご相談ください。

まとめ:かかりつけ医と連携し、安心して夏を乗り切りましょう

熱中症対策の基本は水分補給ですが、その方に合った「適切な量」は、年齢や持病によっても異なります。特に心臓や腎臓にご病気がある方は、個別のアドバイスが不可欠です。

自分の体についてよく知る「かかりつけ医」と日頃から連携し、些細なことでも相談できる関係を築いておくことが、何よりの安心材料になります。

当院では、総合内科専門医の資格を持つ医師が、多角的な視点で皆様の健康をサポートします。お薬のこと、体調のこと、ささいな不安でも、ぜひお気軽にご相談いただき、一緒にこの夏を乗り切りましょう。

なんば内科クリニック 難波将史

この記事を書いた人