街路樹も色づき、いよいよ忘年会シーズンの到来ですね。気の置けない仲間や同僚と囲むお酒やご馳走は、一年の疲れを癒やす「心の栄養」です。
しかし、その一方で気になってくるのが健康診断の数値ではないでしょうか。「お酒は控えたいけれど、付き合いもあるし断れない……」そんな悩みをお持ちの方も多いはずです。
そこで今回は、無理に楽しみを制限するのではなく、「楽しみながら少しの工夫で体を守る」ための、医師直伝のポイントをお伝えします。
■「蒸留酒なら安心」の落とし穴
よく「ビールはプリン体が多いから、焼酎やウイスキー(蒸留酒)ならいくら飲んでも大丈夫」という話を耳にします。確かに、蒸留酒は糖質が少なく、血糖値を気にする方には比較的おすすめのお酒です。
しかし、尿酸値に関しては注意が必要です。実は、お酒の種類に関わらず「アルコールそのもの」に尿酸値を上げる作用があるからです。アルコールが体内で分解される際、尿酸が作られるのを促進し、さらに尿として排出されるのを邪魔してしまいます。
「ハイボールだから大丈夫」と油断して飲みすぎてしまっては、結局、尿酸値の上昇を招いてしまいます。お酒の種類を気にするだけでなく、やはり「量」への意識を心の片隅に置いておくことが大切です。
■明暗を分けるのは「おつまみ」と「お水」
飲み会の席で、お酒の量を厳密にコントロールするのは難しいものです。そこで活躍するのが「おつまみ」の選び方です。
- おすすめの味方: 枝豆、冷奴(豆腐)、野菜スティック、ナッツ類。
これらは糖質が少なく、ビタミンやミネラルも含んでいます。最初にこれらをオーダーし、お腹をある程度満たしておくのが賢い作戦です。 - 注意したい強敵: 唐揚げなどの揚げ物、甘辛い味付けの料理。
そして最大の敵は「締めのラーメン」です。アルコールで満腹中枢が麻痺している時のラーメンは格別ですが、血糖値と尿酸値にとっては大きな負担となります。ここはぐっと我慢する勇気を持ちましょう。
また、お酒を飲む際は、合間に必ず「お水(チェイサー)」やお茶を挟むようにしてください。体内のアルコール濃度を薄め、飲みすぎ防止にもつながります。
■冬こそ注意!「隠れ脱水」が痛風の引き金に
意外かもしれませんが、冬は痛風発作のリスクが高まる季節でもあります。
夏場のように汗をかかないため油断しがちですが、冬の乾燥した空気は体から水分を奪います。さらに、アルコールには強い利尿作用があるため、飲めば飲むほど体は「脱水状態」に陥りやすくなります。
血液中の水分が減ると、相対的に尿酸の濃度が高まってしまいます。忘年会の翌朝、「足の親指の付け根が激しく痛む」という発作が多いのは、この「冬の隠れ脱水」が大きく関係しているのです。
■「翌日のケア」と「早めの相談」
もし飲みすぎてしまった翌日は、とにかく水分を積極的に摂りましょう。また、アルコールの分解で消費された「ビタミンB1」を補うために、納豆や豆腐などの大豆製品を食事に取り入れるのも効果的です。
私たちは、皆さんに「飲み会を断って節制しなさい」と申し上げたいわけではありません。楽しい時間は心の健康に不可欠です。ただ、今回お話しした内容を少しだけ心の片隅に留めていただき、できる範囲で実践してみてください。
もし、足の親指などに違和感や痛みを感じた場合、あるいは健康診断で尿酸値や血糖値を指摘されたことがある場合は、放置せずにご相談ください。痛風は、適切なお薬でコントロールすることで、あの激痛の発作を防ぐことができます。
当院では、総合内科専門医の資格を持つ医師が、皆様の生活習慣や背景を理解した上で、多角的な視点で健康をサポートします。
「ちょっと飲みすぎが続いているな」と気になったら、お気軽にお立ち寄りください。
なんば内科クリニック
難波将史
【参考文献】
- 一般社団法人日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会 編. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版. 診断と治療社, 2018.
