「タバコは昔やめたから大丈夫」は本当? 坂道や階段での息切れ、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のサインかもしれません。

安芸郡府中町にお住まいの皆様、こんにちは。なんば内科クリニックです。

最近、坂道やご自宅の階段を上るとき、あるいは買い物帰りに、以前より息が切れたり、「しんどい」と感じたりすることはありませんか?

「もう年だから体力が落ちただけ」「運動不足かな」と、つい見過ごしてしまいがちなその症状。もしかすると、それは単なる加齢のせいではなく、「COPD(シーオーピーディー:慢性閉塞性肺疾患)」という病気が隠れているサインかもしれません。

特に、「タバコはずいぶん前にやめたから、自分は大丈夫」と思っている方にこそ、ぜひ知っていただきたい大切な情報です。

COPDは、長年の喫煙習慣などによって肺にダメージが蓄積し、空気の通り道である気管支が狭くなったり、肺胞(酸素を取り込む小さな袋)が壊れたりする病気です。

この病気の怖いところは、ゆっくりと進行し、かなり悪化するまで症状が出にくいことです。

白内障が年齢とともに顕在化するように、COPDも若い頃に蓄積したダメージが、年齢を重ねてから「息切れ」という症状になって現れることがよくあります。

「禁煙できたこと」は、将来の健康のために非常に素晴らしいことです。しかし、残念ながら、一度傷ついてしまった肺の組織は、禁煙しても完全には元に戻りません。

そのため、禁煙に成功してから何年も経った後に、初めてCOPDの症状が出現するケースは決して珍しくないのです。

COPDの症状には咳や痰(たん)もありますが、これらが続けば「風邪が長引いているのかな?」と医療機関を受診するきっかけになりやすいです。

一方で、最も見落とされがちなのが「息切れ」です。

  • 以前より歩く速度が落ちた
  • 同年代の友人や家族と一緒に歩くと、自分だけ遅れがちになる
  • 階段の上り下りが億劫になった
  • 洗濯物を干すといった日常の動作ですら、一休みしたくなる

こうした「年のせい」にしてしまいがちな変化こそ、COPDの初期サインである可能性を疑う必要があります。

「もしかして?」と不安になった方も、ご安心ください。COPDの診断は、比較的簡単な検査で行うことができます。

診断には「呼吸機能検査(スパイロメトリー)」という検査が必須です。

「検査」と聞くと、「大変そう」「苦しいのでは?」と身構えてしまうかもしれません。

この検査は、検査用の筒(マウスピース)をくわえて、息を思いっきり吸ったり、勢いよく吐いたりするものです。少し頑張って息を吐いていただく必要はありますが、所要時間は数分程度。胃カメラ(内視鏡検査)などのように体に管を入れる検査と比べれば、ずっと負担の少ない検査です。

COPDは「一度なったら治らない病気」と聞き、診断されるのを怖く思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、最も大切なのは、「いかに早く病気を発見し、治療をスタートできるか」です。

治療の第一歩は、もちろん禁煙の継続です。それに加え、現在は「吸入薬」による治療が非常に進歩しています。

早期に吸入薬などの治療を始めることで、病気の悪化や呼吸機能が低下していくスピードを穏やかにすることができます。

早く診断し、早く治療に取り掛かること。それが、数年後、数十年後も「自分の足で行きたいところへ行く」「趣味を楽しむ」といった、将来の生活の質(QOL)を守るための最大の「チャンス」だと捉えてください。

「最近、体力が落ちた」「歩くのが遅くなったかも」と感じたら、まずはCOPDを疑う状況かどうか、お気軽に私たちにご相談ください。

問診や診察で必要と判断した場合には、呼吸機能検査などを行い、診断につなげます。

(なお、当院では現在、禁煙外来(保険診療)は実施しておりませんが、ご希望の方には禁煙外来を実施している医療機関を責任を持ってご紹介いたします。)

肺の病気は、心臓や全身の健康状態とも深く関わっています。当院では、呼吸器専門医として肺の症状を詳しく拝見するだけでなく、総合内科専門医がん薬物療法専門医としての多角的な視点も持って、お一人お一人の背景や生活に合わせたきめ細やかな医療を提供することを心がけています。

安芸郡府中町の「かかりつけ医」として、皆様の健やかな毎日のために、なんば内科クリニックはいつでもお待ちしています。

なんば内科クリニック  難波将史

【参考文献】

  1. 一般社団法人日本呼吸器学会.「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」
  2. 一般社団法人GOLD日本委員会.「COPDはどんな病気」https://www.gold-jac.jp/about_copd

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